「翻訳というおしごと」読みました

投稿者: | 2020年1月10日

翻訳に興味を持って以来、情報収集として購入した出版物は、全てイカロス出版の雑誌・ムックでした。具体的には

  • 通訳・翻訳ジャーナル2020年冬号(興味持った時点の最新刊)
  • 通訳・翻訳ジャーナル2019年夏号(バックナンバー新品購入)
  • 通訳・翻訳ジャーナル2018年夏号(バックナンバー古本購入)
  • 産業翻訳パーフェクトガイド

です。

今回情報収集用に購入したのは書籍です。著者は実川元子さん。もちろん知りません。

翻訳というおしごと

著者である実川さん以外に、この本では数人の現役翻訳者の方のインタビューが収録されています。実川さんの書きぶりでは、業界の有名人も多くいらっしゃるようですが誰一人知りません。でも私がこのまま翻訳に興味を持ち続けられたら、今後何度も名前を聞く方々になるのかなぁと思っています。

さて、冒頭で記載した雑誌・ムックとこういった書籍の大きな違いの一つは、広告の有無でしょう。雑誌はどうしても広告主の目を気にします。翻訳学校が広告を入れているので、翻訳業界についてあまりに悲観的なことは書けないはずです。そんなことしたら誰も翻訳学校に行かなくなっちゃいますから。

つまり、雑誌の情報はバイアスがかかっていると思って読まないといけません。その点、一般書籍のように広告が入っていなければ、筆者のストレートな思いがそのまま表現されます。肯定的なものも否定的なものも。

例えば、この本では翻訳業界の未来に対しては楽観していません。特に出版翻訳については、翻訳者の使命感で支えられているとまで言ってます。出版業界全体のパイが小さくなっているので非常に厳しいようです。実務翻訳、映像翻訳は市場規模は拡大しているものの単価は低下傾向だとか。つまり、翻訳は職業として多くの収入は望めない。好きでないと続けられないとしています。しまいには翻訳で生活を維持できる程度の収入が得られないのであれば、撤退する勇気を持つことも必要とも言ってます。

と、翻訳業界の今後に対して全く楽観的ではない本ですが、筆者は翻訳者の矜持をもって書いてらっしゃると思います。そんな中から、個人的に印象に残った点をいくつか挙げておきます。

  • インタビューで登場する翻訳者に高学歴の方が多いのにビックリ。井口耕二さん東京大学、鈴木立哉さん一橋大学、林原圭吾さん東京外語大学、井口富美子さん立教大学。そもそも著者の実川元子さんが上智大学外国語学部。帰国子女や留学経験者の方々も。皆さん、インテリなのです。
  • 翻訳雑誌・ムックや翻訳学校のパンフレットには、知識ゼロの文系出身者が理系分野の実務翻訳で成功している例がありますが、本書に登場する森口理恵さんは「文系出身者でも大丈夫ですよ、というのは、最低限必要な知識を身につけ、仕事を選べば大丈夫という意味であって、丸腰でも大丈夫という意味ではありません」と語っています。
  • 実務翻訳者になる王道とは、翻訳会社のトライアルを受ける。合格したらその翻訳会社に登録し、仕事を発注してもらうこと。
  • 翻訳支援ツールに対する評価は翻訳者によって違う。井口富美子さんは積極利用派。 井口耕二さんはご自身の思考過程に合わないので使っていないとのこと。
  • 実務翻訳、出版翻訳、映像翻訳の垣根が低くなっている。
  • 翻訳力は、読解力と表現力を掛け合わせたもの。どっちかがゼロだと全体もゼロ。
  • 翻訳とは、二言語で書かれた文の意味の中心を合わせ、原文を読んだ人と訳文を読んだ人が頭の中で同じ絵を描けるようにすること(この翻訳の定義はなるほどと思いました)。

最後この本は「翻訳者が生き残るための道しるべ」として参考図書をリストアップしています。これが非常に興味深かったです。早速そこにあった「翻訳とは何か - 職業としての翻訳」(山岡洋一著)をインターネットで注文しました。読んだらブログで紹介します。

関連リンク

 「英文翻訳術」読みました

 「<英文法>を考える」読みました

 「語学で身を立てる」読みました

 「翻訳とは何か」読みました

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です